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ザトウクジラ
は春から夏、秋の初めにかけては高緯度地域の餌場で生活しており、冬になると暖かい低緯度地方の海へと移動し、交尾や子育てを行います。例
え
ば北大西洋の西部では北極海に近いグリーンランドやアイスランドの沿岸から南アメリカのベネズエラやカリブ海に浮かぶ西インド諸島にまではるばる何千キロ
も泳いでやってきます。また北太平洋のものは更に長い距離を移動すると言われており、ベーリング海峡やアラスカからハワイのほうにまで移動します。
ザトウクジラ
はそれぞれの地域ごとに異なった集団を形成しており、北大西洋、北太平洋にはそれぞれ2つずつ別個のグループがあり、南半球はそれとは別に
更
に7つのグループを持っていて、それぞれの集団がまとまって行動しています。それぞれのグループの間ではほとんど交流はありませんが、まれにもと居たグ
ループから別のグループへと移り住む個体もありま
す。
彼らは普段群れで行動し、通常
は20〜30、多い時には100〜200もの群れを作ります。それぞれの群れはそ
れほど結びつきは強くなく、大体1〜3匹が
一緒になって行動します。北大西洋に住むザトウクジラは最初北
の餌場から南の海へ旅立つとき、彼らは比較的沖合いの深い海を移動しますが、北緯40度ぐらいにまで南下してくると次第に沿岸の地域にも姿を見せるように
なります。またこのときクジラ達は沖にいるときよりも互いに近くに集まって行動します。またザトウクジラは鳥達と同じように、繁殖を
行うのは毎年ほとんど
同じ場所で行い、また北の餌場に戻っていくときも前年と異なるところに場所を移すことはあまりありません。しかし、まれに餌
場や繁殖地の場所を変える個体
も居るということで、時には太平洋と大西洋といった全く異なる地域に姿を現すこともあります。
彼らは配偶シ
ステムは一夫多妻かつ一婦多夫型であり、発情期のメスには数多くのオスが求愛行動を行います。ザトウクジラの求愛行動には水面を胸ビレで叩
い
たり、仰向けになったり、頭を上にそらせてそのままの形で沈んでいく(ヘッドアップ)行動を取ったりします。求愛が成功するとオスとメスが縦に並んで泳い
だり、
その後互いに回転して泳ぎ、胸ビレや尾ビレで互いに叩き合うところが目撃されています。また一緒に深くもぐりそのまま互いのおなかをくっつけあって浮上
し、水面から胸ビレあたりまで姿を現した後、共に水面へと倒れこむしぐさも知られています。
彼らの妊娠期
間は11ヶ月ぐらいであり、この間に胎児は母親のおなかの中で一ヶ月に17〜35cmぐらいの割合で成長し、生まれるときには既に体長4.
6m、重さ1.3トンの大きさがあります(アフリカゾウの赤ちゃんの10倍以上!)。ザトウクジラは普通温かい温
帯か、熱帯の水域で子供を産みます。ホ乳類である彼らは最初母親
のミルクを使って子供を育て、授乳期間は約5ヶ月ぐらいです。この間子育てはメスの仕事であり、オスは全く子育てを行うことはありません。ザトウクジラの
ミルクは非常に栄養が豊富で大量のタンパク質や脂肪、ラクトース、そして水分を含んでいます。メスは
ひとつの繁殖期に一度だけ排卵を行い、2年ごとに交尾を行います。たまに2年続けて出産を行う場合があ
りますが、この時メスは一匹目の子供の世話と、二匹目の子供の妊娠を同時にこなします。
生まれた子供は2〜5歳ぐらいになると性的に成熟し、交尾をすることが出来るようになります。その頃になると大体12mぐらいにまで成長していますが、
12〜15歳ぐらいまで大きくなり続けます。一般にザトウクジラの寿命は50年程度であると言われています。
普段ザトウクジラはそれほど気性の荒い動物ではありませんが、子供を連れた群れは神経質であり、近づく
ものに対して攻撃的になります。また繁殖を行うとき
の群れではオスが相手のメスを自分のものであることを示すため、やや気性が荒くなり、近づくものに対して体をくねらせたり、尾を横に振ったり、水面を尾で
叩いたりします。また繁殖期の
ザトウクジラはよく『歌』を歌うことが知られてお
り、その長さは35分から長いときには数日にも及び息継ぎの
ときだけ音がやみます。この歌には様々な音が含まれており、うめき声や鳴き声、悲鳴、さえずり
と言った様々な表現がされています。また歌を歌うのは主にオスのクジラであるといわれています。
ちなみにアメリカのNASAが1977年に打ち上げたボイジャー1号、2号には地球
外知的生命体に向けて作られたメッセージが積み込まれており、その中に
はモーツァルトの音楽と共にザ
トウクジラの歌を収録した金の入れ物に入った銅のレコードが
含まれているそうです。ザトウクジラの歌は宇宙レベルで有名な
ん
ですねぇ…。
冒頭にも述べたとおり、ザトウクジラはブリーチングと呼ばれる大ジャ
ンプをすることでしられており、ホエールウォッチングでは人気の的になっています。こ
のブリーチングがなぜ行われるのかはまだ良く分からない部分がありますが、個体同士の意思疎通を行うため、もしく
は体についている寄生虫を落とすためであ
ると考えられています。このブリーチングは多い時には連続して200回以上も飛び出した例が
報告されています。そのほかにも彼らは水面を胸ビレや尾で
打ったりすることでコミュニケーションをとっていると考えられており、また大きな頭を水の上に出して『スパイホッピング』と呼ばれ
る周囲を確認するような
行動をとったりします。
ザトウクジラはその体の大きさゆえ、体の内にも外にも大量の寄生虫が住んでいます。体の中には条虫や
線虫、吸虫類などが住んでおり、特にヒゲの中にはOgmogaster
ceti
と呼ばれるナガスクジラの仲間に特有の線虫が住ん
でいます。また体の外には多くのザトウクジラが白っぽい卵形の傷を持っており、これは寄生性のヤツメウナギが住んでいること
を示しています。
渡りを行うときのザトウクジラ
の泳ぐスピードは時速3.8〜14.3kmぐらいで
あり、速いものになると時速27kmに達します。子供と居るクジラが最も
泳ぐスピードが遅く、一匹で居るクジラは集団のものより速く泳ぐ傾向にありますが、動くスピードが遅いものほどその体に寄生する寄生虫の量が多くなりま
す。またザトウクジラのあごやのど、生殖器や体中の傷の中には数多くのクジラジラミが住んでおり、そ
れと共にフジツボな
ども見ることが出来ます。
かつて世界中の海には約100,000頭のザトウク
ジラが住んでいたと言われています。
しかし、近代に入り人間による捕鯨が本格化すると彼らの数は一気に減少するようになります。彼らは近代の
捕鯨時代において最も重要な獲物のひとつであり、
その脂はマーガリンや料理用の脂などで食用に用いられたり、機械の潤滑油やランプの燃料として用いられてきました。またその肉も人間やペットの餌として使
われ、肉骨粉の形で肥料としても用いられていました。彼らが捕鯨の主要なターゲットになった理由として熱帯の繁殖地に集団で集まり、また北の餌場でも浅瀬
に近づくという性質があった事が挙げられています。
最も多いときには1910年
〜1916年の間に60,000頭を超えるザトウクジラが狩
られた記録があり、また1930年代と1950年代にも大規模な捕
鯨が行われました。また北太平洋でも3,000を超えるザトウクジラが1962〜3年の2年間の間に殺されました。これを受け、各地の商業捕鯨は1956
年に北大西洋で、1963年に南半球で禁止され、そして最後に北半球に居るものも1966年には保護の対象となりました。
現在地球上にどれだけのザトウクジラがいるのかは諸説がありますが大体10,000頭
弱から20,000頭ぐらいではないかといわれており、北大西洋に最も多くの個体が住んでいます。商業捕鯨の禁止により、今ではその数は着実に回復に向
かっているということです。しかし、沿
岸の地域などでは魚を取るための網が長距離に渡ってザトウクジラにより破壊されるケースがあり、問題になっていま
す。また近年ザトウクジラの体の脂肪の中からDDT(ジクロロジフェニルトリフロロエタン)やPCB(ポリ塩化ビニル)な
どの化学汚染物質が検出されてお
り、新たな側面で我々とザトウクジラの共存を考える必要があるかもしれません。
まあ、そんなこんなで変わった姿とダイナミックな動きから人気者のザトウクジラなんですが、なんとあの『スタートレック』の映画版、第4作の『故郷
への長い
旅』にもかなり重要な役で出演しているそうで、ぜひ一度見てみたいなと思ってたりします。
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