これまでダイオウイカが他の個体と一緒に居たり、一度に二匹が同じ網にかかったと記録はありません。従って
彼らは普段単独で行動していると
考えられています。(
もしも
ダイオウイカが数百匹の大群で泳いでたら…。考えるだけでも恐ろしいっす…。)
そんなダイオウイカがどのようにして他の個体と出会い繁殖を行っているかはわかって居ませんが、
オスは体の中で『精包』とよばれる細長くて薄い円筒形の精子が入った袋を作り出しま
す。成熟したオスは10本の腕のうち二本の形状を変化させますが、この腕は
『交接腕』と呼ばれ、
これを使ってメスの体内へ精包を送り込む
といわれています。一方
メスは長さ0.5〜1.4mm、幅0.
3〜0.7mmのクリーム色から白に近い色をした卵を持っています。あるメスの死骸の中からは
重さ5kg、数にして100万個以上の卵が
見つかったことがありました。
産み落とされたダイオウイカの卵はいまだ見つかっておらず、大型の海洋性のイカが行うようにゼラチン状の塊の中に産むのかそれともひとつひとつバラまい
て産むのかは分かっていません。しかしながらメスの体の中には発達した
『卵包腺』とよばれる
ゼラチン状の物質を作る器官が
備わっており、このことから恐らく
彼らはゼリーの中にまとめて卵を産み付け
ると言われています。
ダイオウイカの卵がどのような場所に産み落とされ、幼生がどのようにして孵化するのかは謎になっています。これまでダイオウイカの赤ちゃんは確認されて
いませんが、いくつかの個体がダイオウイカの子供ではないかと報告されました。
しかしながらこれらの標本は実際には別の
種の誤認であったり、損傷が激しかったりして彼らの幼生がどのようなものなのかは分かっていません。
イカやタコの仲間(頭足類)は非常に成長が早いことで知られており、浅い海に棲む小さい種類のものであれば6〜8ヶ月で大人になり、他の多くの種でも
12〜18ヶ月しかかかりません。しかしながらダイオウイカが一般的な成体の体重である500kgに達するには、このイカの成長の早さを考慮に入れたとし
ても、
少なくとも3年かかると
いわれており、
彼らの年齢はそ
れ以上だと考えられています。最大記録である全長18mに達するには、一体どれだけの年月がかかるのでしょうか…?
これまで長年の間ダイオウイカ達が何を食べて生活しているのかは分かっていませんでした。しかしながら最近の研究から
オレンジラッフィーやホキと呼ばれる種類の魚や、他の種類の深海性のイカを食べていることが分かってきました。
逆に彼らを食べようとする天敵についてみてみると、
ダイオウイカが生まれて間もないときには
彼らは多くの深海性の魚などに太刀打ちすることは出来ません。ですが一旦成長してしまうと普通の生き物に襲われることはないと考えられてい
ます。
唯一成体の彼らを襲うと
いわれているのが、全長12〜15mになるマッコウクジラ達で
す。長さこそダイオウイカのほうが勝っていますが、マッコウクジラの体重は
30〜40tにもなり、
最大でも1tにしかならないダイオウイカ
はひとたび攻撃されればひとたまりもないといわれています。実際このことを裏付けるように、
マッコウクジラの胃の中からは数多くのダ
イオウイカが見つかっています。
ただいつもいつもダイオウイカがマッコウクジラの餌になって
いるわけではないという事例も各地で報告されています。1965年ソビエトのクジラの調査員が40tのマッコウクジラとダイオウイカと
の格闘を目撃していますが、このときクジラはダイオウイカの頭を食いちぎっていました。しかしイカの触手がクジラの喉に巻きついて離そうと
せず、結果的に両者とも死んで
しまったということです。また食べようとしたクジラにダイオウイカが
巨大な触手を巻きつけ、逆にものすごい力
でクジラの背骨を折り、殺してしまった音を聞いたという船乗りの証言もあります。我々が思っているよりもクジラにとってダイオウイカを食べ
るのは大変なことなのかもしれません。
また南極海で捕獲された
オンデンザメの仲間の胃の中からダイオウイカのものと思われる肉片が見
つかっています。サメ達がどれだけダイオウイカを食べているかは分かりませんが、深海に潜ることの出来る大型のサメは少なく、やはり主たる
ダイオウイカの捕食者はマッコウクジラと思われます。
しかし、マッコウクジラはこんなに不味
いダイオウイカを食べても気にならないんでしょうか…?
古代ギリシャのホメロスやアリストテレス
の書物の中には恐らくタコと思われる巨大な頭足類
の記述が見られます。また太古の昔から
クラーケンと呼ばれる頭足類も
しくはクラゲと思われる怪物の伝説がヨーロッパを中心として各地に残されており、1500年代半ばに出版された自然誌にはすでに凶暴なイカに対する記述を
見ることが出来ます。これ
らのうちのいくつかは
ダイオウ
イカの目撃例をもとにしていると考えられています。
近代に入りダイオウイカの生態が明らかになってくると、次第にこれらの話は単なる神話やおとぎ話として捉えられるようになり、船を襲うような怪物は小説
の中だけのものであるとされました。しかしながら
時代が20世紀に入っても、まるで現代の
クラーケンを思わせるような出来事が報告されています。
例えば1930年代ノルウェーの王国海軍に所属していた
ブランズウィック号は少なくとも3回巨大なイカによる襲撃を
受けています。このときイカは初め船の横に沿って泳ぎ、その周辺を泳ぎ回った後、突然
船体に巨大な触手を巻きつけてきたとい
われています。ですが、
金属で
出来た船体をしっかりとつかむことが出来なかったイカは体を滑らせスクリューに巻き込まれてしまい、ようやくのことでブランズウィック号の乗組員は難を逃
れたということです。
また第二次大戦中にもこのようなエピソードを見ることが出来ます。ある晩イギリス海軍に所属するトロール船がインド洋のモルジブ諸島に停泊しており、あ
る晩その船のクルーであったスターキーは夜釣りをしようと一人でデッキにあがってきました。ふと水面を見ると、彼は船の明かりに照らされて光り輝く
緑色の環が水中に浮かんでいる
のに気づきました。
『一体、あれ
は何だ?』と思いながら、彼がその輪を見ていると、次第にあたりの水面が波立ち始め、次の瞬間
彼が見ていたものは巨大なイカの眼である事が分かりました。イカは船に寄り
添う形で体を浮かべており、スターキーが船体に沿ってその大きさを測ったところ、なんと
イカは53mもあった船と同じぐらいの長さがあったということ
です。
これらの話がどこまで本当のことを言っているのかはわかりませんが、更にダイオウイカの研究が進めば、これまで我々が思いもしなかった真実が明らかにな
るかもしれません。